大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(ネ)946号 判決

証拠によれば、前示訴願裁決取消訴訟においては、本件土地がいずれも買収計画樹立当時の現況山林であつて農地でないと判定せられ、従つてこれを農地であるとの認定の下になした小田原市農地委員会の買収計画は違法であり、これを是認した神奈川県農地委員会のなした訴願棄却の裁決も違法であるとして、取り消されたという経緯を認め得べく、右判決は既に確定したこと前示のとおりであるから、右確定判決はその事件について関係行政庁を拘束し(行政事件訴訟特例法第十二条参照)、前示各関係行政庁のなした本件土地に関する各行政処分も全部違法として失効したものであるけれども、このことを以つて直ちに右各行政庁の職員の不法行為として被控訴人たる国に損害賠償義務が発生するというわけではない。もし右各行政庁の側においてこれら処分をなすにつき故意過失の責むべきものがあつて初めて不法行為を構成することとなるわけである。

そして一般に行政処分は、抗告訴訟の提起により当然その執行を停止せられるものでないから、神奈川県知事が前示買収計画を適法なものとして、これにもとずいて本件土地につき買収処分をなし、右買収土地について関係行政庁が前示経過の如く売渡処分に及んだとしても、また控訴人の主張する如く、昭和二十四年二、三月頃小田原市農地委員会書記鈴木幸蔵が右売渡を受けた者等の要望により、本件土地上に生立する幼齢樹や根株の伐採除去を勧奨指導してこれを撤去せしめた事実ありとしても、これら一連の行為はいずれも前示裁決が判決によつて取り消される以前のことに属するのであつて、既に前説示の如く本件買収計画の樹立、異議却下並びに訴願棄却の裁決をなすに当り、関係行政庁側に故意過失がない以上、改めて調査をし直すことなく爾後の買収、売渡の手続を進めても何等とがむべきでなく、また右行為当時既にこれら関係行政庁側ないし職員において、さきの買収計画が目的土地の現況に関する認定を誤つた違法のものとして取り消さるべきことを認識しながら、敢えてかかる措置に及んだという特段の事情の認められない本件にあつては、これまたその故意は勿論過失の責に帰せしめることはできない。

(斎藤 坂本 小沢)

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